個展 色のすること 接触
わたしにとってのとても真ん中を発表できる機会であり、初めてきちんと向き合った'黒'たちの登場でした。
この展覧会に、精神科医の湯澤美菜さん スパイラルガーデン ギャラリー担当 倉持陽介さんがテキストを寄稿してくださいました。
自身ではことばにできなかった輪郭に触れてくださり、こころより感謝を込めて。ここにご紹介させてください。
植田 志保
植田志保が描く作品の中で、「色」は意志を持った生命体の様に画面の中にたゆたう。
これまで植田は、日常や森林の中に溢れる光の粒子や雫、樹木、花々をモチーフに、 「色」の有機的な動きを捉えた作品群<色のすること>を発表してきた。 また、花についての対話を通し、個人の記憶に潜む「色」を顕在化させる、 対話型ライブペイント<In a Flowerscape>をライフワークとしておこなっている。
これらの活動を経て、植田は「色」が発する声に突き動かされるような制作スタイルから、
能動的に「色」と対話し、よりロジカルに「色」を扱うインテリジェンスを獲得しはじめている。
それは音楽家が五線譜に音符の抑揚でリズムを生み出すように、建築家が土地を読み取り構造化していくように、「色」が発する言葉を理解した上で、全体のバランスと必然性によって「色」を描き出す、彼女独自の「色」の哲学と、画力を身につけ始めているのである。
いまの植田が描く作品は、鑑賞者に「色」の個としての存在の強さと、「色」同士が接触することによる 無限の多様性を感じさせてくれる。私たちの日常を圧倒的な速度と量で押し流していく情報のなかで、 失いつつある「色」を感じる感性を改めて示してくれることが、彼女の作品が支持される理由でもあるのだろう。
自分の「色」をどう社会の中で存在させられるか、他者が放つ「色」とどう付き合っていくか。
誰もが持つこの問いに対し、「色」に寄り添い対話を重ねてきた植田の作品を観ることは、
自分のその時々の「色」に意識的になり、他者の「色」の意志と交わることを恐れないことによって、 多様性のなかでしなやなかに共存できることを教えてくれる。
植田は本当に世界を変える、一人のアーティストになり得るかもしれない。
「色」と共に進む、彼女の行く末が楽しみでならない。
スパイラルガーデン ギャラリー担当
倉持 陽介
人との御縁は作為ではどうしようもないもの、このような形に着地していることは本当に有難く、感謝の一言につきます。
植田志保 色のすること
色は、様々な波長の光と、それが照らす物体により、私たちが見ることができる刺激です。一色ずつのみでなく、グラデーションやコントラストなどの集合体としてもまた別の複雑な価値が生まれます。もう一つある色のユニークな特徴として、概念と強いつながりがあることが挙げられます。私たちの心の中にそれぞれの色がどのようなものかの認識がしっかりとありますが、色自体を思い出す時、それは形を伴いません。このように考えると、色は周りに当たり前のように溢れていますが、とても不思議な存在です。
また、そのような、形を持たない性質のせいか、顔色、声色、音色などのように、感情や精神といった、感じることができるけれど見えない刺激の表現としても用いられています。例えば、「色即是空」という仏教の考えは、この世のすべての事象は関係性や縁によって成り立ち、何事もつながりから隔絶されることなく、無常の流れの中で存在するというものです。この中で、形を持たずともはっきりと感じ取ることができる性質を持つ色が、すべての事物を表す言葉として用いられています。このような普遍的で本質的な、難儀なものの例えでさえ、色は存在そのもので教えてくれます。
色の世界は、この世界の如く果てしなく広がり、一部にも全体にも、未来にも歴史にも、瞬間にも永遠にも、私たち人間の思いやストーリーを全て受け入れながら寄り添っています。
植田志保は、そんな色の世界と強くつながり、色のすることという活動をしています。色に着眼点を置いた彼女の作品は、まさに色即是空のように、気配や流れ、精神の動きを感じさせる無常の瞬間の切り取りのように感じられます。丁寧で素直なエネルギーがよどみなく溢れ、まるで色がこちらに世界を開いてきたように。
そんな、見えるようで見えない、感じるようで味わい尽くせない、掴めるようで実体が掴みきれない色の世界を、植田志保の作品を通して少しでも身近に感じられたら、とても嬉しく思います。
2017/06/27
<English>
Shiho Ueda What colors do
Color is everywhere and such mysterious.
First of all, when visible wavelength lights objects, color is recognized through our eyes. When we see color, not only one color means, but also multiple colors does with complicity with gradation or contrast. Another feature of color is the strong connection with its concept. Although we have certain image of what each color is, it does not have a shape in our minds.
Because of this intangible feature, in Japanese we write ‘color’ as ”色:iro” for the expression of face “顔色:Kao-iro”, for the tone of voice “声色:Kowa-iro” or for a sound “音色:Ne-iro”. They are sensible but invisible stimulus including emotional meanings. Here, as another example, there is a Buddhist lesson “色即是空:All is vanity, matter is void.”. It teaches us that universal transient linkage is the basis of any phenomenon and no matter is isolated from this principle. In this lesson, we allocate color “色” for any phenomenon. Color can express even such universal, essential, and difficult rule.
The world of color is infinite as this world, and supports human society partially or whole, from the past to the future, for a moment or eternally by accepting our thoughts and stories.
Shiho Ueda has been strongly connected with the world of color, and it is named “what colors do”. Her artwork focusing on colors seems as cut-off moment including subtle hints of emotional current, which reminds of “All is vanity, matter is void”. Gentle and honest energy flows in her artwork as the world of colors gets closer.
It would be greatly appreciated if you feel the world of color is closer through Shiho Ueda’s artwork.
2017/06/27
接触という現象は、抽象的で刺激的で、人間にとって本質的な内外の関わりの意味も含まれており、まさしく今の植田さんそのものが掴んだテーマであると感じました。
接触というテーマに添えて
他者と接触する時、私たちは、日常的な社会生活の中で様々な混乱を体験します。
それは、言葉の定義と同じく、物理的な意味と精神的な意味の違いがあるためかもしれません。接触という言葉は、物理的には、お互いに触れ合う接点があることを示します。しかし、人の心や文化、歴史、自分自身などが対象となる精神的な意味としては、接点自体よりもむしろその境界線を超え、お互いが混ざり合って干渉し、その結果として何がしかのうごめきや変化があるような、新しい広がりを含めた意味を持ちます。
他者との関わりの中でのふとした物理的な接触が、精神的な接触にどの程度迫っていたかと思いを馳せると、接触以前の時空間にすら特別な色彩が浮かび上がってきます。接触後にあれこれと想起しコミュニケーションが変化していくことも含めれば、私たちにとって接触がもたらす内外への影響は甚大です。
また、幾多の外界との接触が蓄積されると、同時に自分自身の内界との接触も次第に深みを増していきます。新しい視点でより可能性の開かれた外界と接触することと、より多く、より深く自分の内界に接触していくことは、繊細かつダイナミックな接触の作用が幾重にも積み重ねられた結果とも言えるでしょう。
接触の質感、流れ、作用。
今まで知らなかった植田志保の掴む世界との、そしてあなた自身との接触を問いかける作品群が展示されています。
2017/06/27
artscape 小吹 隆文 さんより
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Looking forward to seeing you there !
Sincerely,
shiho ueda
DM design by Kentaro Sato
ご報告とご案内を。
この度、あたらなプロジェクトをはじめることになりました!
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植田 志保、小木戸 寛、小木戸 利光が、色の絵、ピアノ旋律、詩と歌によって、ひとつの風景からなる物語を生み出す。3人は山々に囲まれて育ったという記憶の原風景が近く、その共感か ら、このプロジェクトを始動するに至った。今回は、春の奥多摩で共有した体験をもとに、パフォーマンスを行う。